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1999年10月26日から2004年10月12日まで続けたマーケティング的コラムをブログとして復活させました。 大昔に会社の部門報に書いた文章も少々。
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2週間お休みしている間、ほんとーに、あれこれやることが多くて、でも先週末ようやくそれが一段落しました。
すでに、サイトのトップページには記しておきましたが、こんなものを浜松大学で立ち上げました。
浜松大学セグウェイラボ

「日本初」のセグウェイ研究機関です(と思う…)。
とはいえ、マーケティング屋の私が、未来の乗り物を、工学的に分析することなぞできません。
もちろん、「商業的利用価値」を中心に検討することになります。

これの第1回試乗体験会を、先週土曜日にやるために、まああれこれ作る初めてのモノ。
これが大変でした。
試乗マニュアル、試乗会運営マニュアル、セグウェイの案内書、そしてプレミアム用缶バッジ(爆)。
自分の本業がなんだか、段々分からなくなっていました…。

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ここでセグウェイを詳しくご存じない方に、どんなものか、簡単にご紹介いたしましょう。

事の発端は、2001年にまで遡ります。
アメリカの発明家ディーン・カーメン氏が、画期的な発明をしたことがマスコミで噂されることとなりました。
その「モノ」は、開発名から「Ginger」と呼ばれていました。
「Ginger」は、「空を飛ぶ」とか噂が噂を呼び、謎は深まるばかり。

かくして、01年末、その正体が明かされると、何てことはない「電動式の立ち乗り2輪車」でした。

ところが、不思議なことに、このGinger、いや、この時からセグウェイ(Segway)は、人が乗っているのに、安定しているから不思議。
さらに、少し前に体重をかけるだけで、前に進む。
後ろに傾ければ、後ろに進む。
アクセルもブレーキもないのに、動いたり、止まったりするそのアイディアに、人々は驚愕しました。

充電式で、満充電で約20km走行でき、最高速度は約20km。
コンセプトは、ちょっとした買い物や近所に出かける時に使うものです。
「遠乗り」をする乗り物ではありません。

とはいえ、アメリカでも、交通法規を改正しなくては、セグウェイで公道を走ることは許されません。
アメリカでは、現在40ほどの州で、「歩道」を運行することが許されています。

そして、日本では、公道を走ることが一切許されていません。
そう、日本では、私有地しか走ることができない「哀しい乗り物」なのです。
そのため、あちこちの各種イベントに、時折引っ張り出される程度。
しかし、そうしたイベントでは、必ずや大盛況になっているようでもありますが。

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とまあ、こんなところがセグウェイのあらましです。

ただ、こんなあらましよりも、今の日本におけるセグウェイの立場を危うくしているのが、この事件です。

セグウェイ走らせ罰金50万 「整備不良二輪車」認定=共同通信04年4月9日

この事件のために、妙に有名になってしまったという感じがしています。

まあ、この方のやり方は、分からないでもないです。
グレーゾーンを強引に突破するやり方。
欧米に比べて、新しいものに及び腰な日本を、象徴するかのような警察に、きっと業を煮やしたのでしょう。

マーケティング的にいえば、「加納典明」とか、「愛のコリーダ」なんて事件と、同じアナのムジナとなるのでしょうかね。
成功した例としては、大阪有線放送(現有線ブロードネットワーク)が、大昔、勝手に電柱に機械を取り付けていた例などが、あげられるのでしょうか。
あれはグレーというより、ブラックだと思うんですけどね。
それが今では、総理大臣のお墨付きももらいました。

そんなグレーな雰囲気を感じてか、一般からのイメージが悪くなったような気がしてなりませんでした。
何となく「不良の乗り物」みたいなイメージ。
暴走族の改造バイクみたいなのと同じ印象?
哀しいですねぇ、世紀の発明なのに。

自分のセグウェイを、警察に取り上げられたままの神田氏は、ついに警視庁相手に「レンタル費請求」を起こしたようですから、ますます泥沼化です。
セグウェイは悪くないんですけどねぇ。

ま、神田氏も、どうせグレーゾーンを突破するなら、アメリカに行って、ブッシュに貢ぎ物でもして、「一言日本の小泉に言ってやってください、『セグウェイを公道で走らせろよ』って」やればよかったのに。
そうすりゃ、一発ですよ。
何といっても、アメリカのいいなりの国ですから。(^▽^
自衛隊だって、戦闘地域に行けるよう法律を変えちゃうんだから、それに比べりゃ、こんな乗り物を公道で走らせることくらい、訳ないと思うんですけど。

などという暴論を吐いていると、私も同じアナのムジーナになりそうなので、この程度で「ジョ~ク」はやめておきましょう。

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こういう新しいモノを受け入れる時、必ず抵抗はあるものです。
何も国家権力だけでなく、消費者側にも、歴然と抵抗感はあるものです。

今回のラボ設立にあたって、担当する授業でアンケートを取ったのですが、その時の感想に「クルマや自転車があるからいい」とか、「歩けばいい」というのがありました。
(浜大セグラボのサイト「Activities」ご参照)

「野暮な意見」とも思えますけど、ある意味至極真っ当ですね。
確かに歩けばいいし、クルマもあれば、自転車もある世の中で、セグウェイは、どの「隙間」に入り込んでいくのか。
そこがポイントです。

私が、このセグウェイのことを初めて知った時、映画「明日に向かって撃て」(1969年アメリカ)を思い出しました。

ポール・ニューマンとロバート・レッドフォード演ずる銀行強盗の話の中、やや唐突に、「未来の乗り物」として、「自転車」をセールスするオヤジが現れます。
ポール・ニューマンらの一味を捕まえようと、街の人に訴えかける保安官を遮って、そのセールスオヤジは、こうブチ上げます。

「老若男女よ、これぞ未来なり」
「取り出したるものこそ、未来を支配する乗り物」
「これで暮らしはバラ色に」
保安官(何のつもりだ)
「この場を借りて商売を」
保(私は公務中だ)
「すぐ済む…、諸君、馬はもう古すぎる」

「Meet our future」「Now, horse is dead」というセリフが印象的です。
(英語は合ってるか、やや不安ですが…)

そして、この後、ポール・ニューマンが、キャサリン・ロスを、自転車のハンドルのところに座らせて、駆け回るシーンに変わります。
バックに流れるのは、バート・バカラックの名曲「雨にぬれても」。
映画史上に残るワンシーンですね。
(著作権的に、ブラックなのですが、許してください…<(_ _)>)

自転車をセールスするオヤジの売り文句、「未来の乗り物」「暮らしはバラ色」「馬はもう古い」。
セグウェイにも、そのまま使えそうな気がしませんか?
もっとも、セグウェイの場合、「馬」に該当するのが、クルマなのか、自転車なのか、はたまた「歩行」なのか、まだ分かりませんが。

そして、そのオヤジの売り文句にのって、翌日早くも入手するポール・ニューマン。
この映画の中でのポール・ニューマンは、西部劇でありながら、「人を撃ったことがまともにない」という面白い役柄。
暴力で、強盗団を引っ張るのではなく、賢さ(ずる賢さ)で引っ張るタイプです。
そんなポール・ニューマンが、「未来の乗り物」にいち早く飛びつく。
これもまた、マーケティングとして、かなり象徴的な場面だと思います。

映画の中では、ロバート・レッドフォードは、あくまでも「拳銃の名手」。
そして、ちょっと「古いタイプの男」を想像させる役柄。
「未来の乗り物」を買う役回りではありませんね。
映画の中だろうと、こういう「未来」に飛びつくのは、やはり「イノベーター」(アーリーアダプター?)なのでしょう。

そして問題は、セグウェイには、どんな人が飛びつくのかな~ということです。

実は、この辺は、学生と試乗会に来た方にアンケートを取って、すでに分析しているんですが、まだちょっと発表できません。
申し訳ございません。
いや、かなりもったいぶってます。

でも、相当面白い結果になっているんですよ。(^▽^フフフ
今、セグラボで公表しているのは、シロウトでもできるような、とおりいっぺんの調査データだけです。
まあ、秋口には公表しましょうか…。
このあたり、ちょっと学者ぶって、ちんたら仕事です(爆)。

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さて、このセグウェイ。
「公道で走れない」という言葉だけ、一人歩きしてしまっておりますが、「車道」をスイスイ走ることは、やはり現実ではない。
いつの日か、日本でも法改正がなされるとしても、それは「歩道」になりましょう。

車道を走るために、ナンバープレートをつけて、方向指示器をつけて、バックミラーをつけて、ヘルメットをかぶって…ということも考えられますが、それじゃ、セグウェイのコンセプトではありませんから。
それなら、バイクで十分でしょう。

このセグウェイを開発したカーメン氏の言葉に、こんなものがあります。

「人は、ちょっとした買い物に行くためにクルマを使ったりする。そのために1.5トンの鉄の塊を動かして、ガソリンを消費している」

そう、クルマの重さって、1トンを遙かに超えているんですよね。
冷静に考えると、我が家も「1.43トンの鉄の塊」で、子供のヤマハの送り迎えをしたりしてます。
最高速度もせいぜい40kmくらいしか出さないのに。
ほんの10分で着くのに。

このように考えれば、セグウェイの競合は、クルマなのでしょうか。
そして、使うべき場所は、都会というよりも、日本では田舎なのかも知れません。
要するに、歩いても10分という距離にもクルマに乗ってしまうようなエリア。

私の義兄の住む、長野県の山奥の村なんて、最適なのかも知れません。
ただ、山奥すぎて、「歩道」なんてありませんが。

実は、セグウェイをアメリカで購入する場合、「講習会を受けなければならない」という制約があります。
私(浜松大学)の場合、購入先の株式会社ヒロテック(静岡県袋井市)の社長から、徹底して講習を受けました。

セグウェイを作っている会社も、安易に売らない姿勢が見え隠れしています。
確かに闇雲に売るなら、もっとバンバン宣伝して、世界各国に法改正を働きかけて、売り込めばいい。
しかしそれをしないのは、セグウェイに「クルマと同じ轍を踏ませたくない」からのような気がします。

クルマは、今まで、人間を何人殺してきたのか。
1.5トンの鉄の塊は、実際に人を殺す凶器です。
ぶつけられたら、人は死にます。
バイクでもそうでしょう。

セグウェイの意図を理解しない人に売ってしまい、安易に事故を起こされて、せっかくの発明が闇に消えてしまう。
セグウェイ社の動きを見ていると、それを恐れているような気がします。

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まあ、ちょっとした思いつきから、こんなことになりました。
別に、「日本にセグウェイを、1日も早く普及させよう!」なんて、肩肘張ったものではなく、じんわりと行きたいと思っています。

大学の広報に問い合わせがあったという管轄の警察にも、「誓約書」を出してこようと思っています。
「絶対公道は走らせません」って。
学内でも、学生や教職員で、自由に乗り回したい人には、誓約書を書かせた上で、免許証を発行するつもりです。

というより、警察の人にも乗ってみて欲しいんですよね。
どんな感じか、是非体験していただきたい。
それでいきなり、「浜松から、一大ムーブメント!」なんてことではなく、セグウェイの意味を理解してもらう人を、少しずつ増やしていくというか、そんな感じです。
それで、時期が来たら、政治家さんにも動いてもらって、法改正となるのでしょう。

日本は欧米より、足腰は重いかも知れませんが、こればっかりは、人の命にも関わることなので、重たい方がいいと思っています。
それが日本流なら、日本のペースに合わせましょう。
自衛隊みたいに、軽率な判断で、海外派兵の法律改正なんてことはしなくていいです。
とはいえ、「三菱の殺人車は公道を走れるのに…」なんて話も出ているんですがね。

ということで、このコラムをお読みいただいている方で、浜松駅から、クルマで30分のところまで来る気合いと時間をお持ちの方は、事前にご連絡いただければ、セグウェイに乗せて差し上げます。<(_ _)>
ただし、ちゃんと「意味」を理解してもらえるという条件付きで。(^▽^


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